|発端、私について|
私について、少し.
私が、物語に巻き込まれた経緯、そして今現在.
私についての俯瞰などではない、私が語る、私についてだ.決して俯瞰ではない.そんな余裕などないのだ.
私がいかにして被害者となったのか.これを読めば、あの人たちの悪だくみを少しは理解できるかもしれない.
すべては、用意周到に準備され、私はまんまとその計画、罠だ、そしてそれは、今現在においても継続しているのだ.あまりにもたちの悪い話ではないか.
記述するのは、あの人たちによって物語に引きづり込まれ、物語の中で物語を読み、気が付いた時には、自分の祭壇を探し求め、挙句の果てには、自分の意志で、しかも積極的に舞台を計画する羽目に陥った私である.
その年は、私に訪れた他の年とは明らかに違っていて、それほど異なっていたので、明確に記憶している.
前の年の最後の月の最初の日に父が逝き、同じ月の最後の日に母が逝った.
そして私は、これまでとは異なった孤独に浸り始めた最初の年だからだ.
これまでは魚釣りの故に孤独であったが、別の孤独の性質、普通にいうところの孤独が訪れた.
新しい孤独が訪れて、二つの孤独が始まった年である.
私の新しい人生が始まった年である.
蛍.
子供の頃、毎年、初夏、必ず、父と一緒に近くの川見に行った蛍を思い出したのだ.
私は、子供の頃に住んでいた集落へと向かった.“初原 (はつばら) ” .
実在する場所で、宮城県宮城郡松島町に所在する.
仙台駅発、東北本線で北へと向かい、愛宕駅で下車.愛宕駅は無人の駅で、ホームはそのあたりを一望できるほどの高みにあり、南北に伸びる軌道の東側には小学校や中学校、小さな商店の集まり、
何年ぶりだろうか、子供の頃と多少は変わってはいるのだろうが、変わりようのない場所なのだと思った.
何か痛みを感じる.
僕の体中、傷に覆われ、痛み、足元からは黴、
小夜、もういい、うすうす分かっていた事だ.
小夜、踊ろう、