|隠された物語|
ホテルで、女中が小夜に明かした、あの時についての物語.
そうだ、なんと懐かしい.あの時から苦汁の日々が始まったのだ.
私についてだ.
神は大地であった.
しかし、彼は、その意味を理解していなかった.
創造
彼は、始めの五日間で、あらゆるものを創造した.
六日目、彼は人間を創造した.
※作り方が異なっていた.
七日目.
彼は、休息すべきであった.彼は、焦りすぎていたのだ.
彼は、休むことなく、深い沈黙と孤独の中で、大地であるところの自分自身を作り上げるための方策を練った.彼が最初の五日間で創造した、ありとあらゆるものの一つであるところの、沈黙と、孤独の中で.
※すでに、彼は大きな過ちを犯していたのだ.彼は、あまりにも浅はかだった.
彼の企て.
横滑り、幽閉、乱脈、乱倫の記載.欺きは横滑りと常に対となっていた.
欺きの欺き、またの名を乱脈、転じて乱倫、即ち.
見るに麗しく、触れるに麗しく、語るに麗しく、嗅ぐに麗しい.
企ての実行.
以下、[ 蛇潜り、漆芸の家 ]、蛇晒の言い伝えへと続く・→
ふしだらな血、ふしだらな血の系譜の起こり.
[ 初原、行列する集落 ] 、小夜の母が、小夜に語った、初原の言い伝えへと続く・→
“ 欺き ” の欠如、不全の状態の始まり.
不全の顕在化.
臨終の苦しみに喘ぎながら、最期の言葉を出だした者がいた.
その者は、「なぜ、私をお見捨てになるのか. 」と問うた.その場に集まった多くの人たちは、神の返答を待って、天を見上げた.神は、「あなたたちは、一体どこを見ているのか.私はそこにはいない.私は、あなたたちから、隔たりなく、隔たれた場所にいるというのに. 」と言ったが、その声は、誰の耳にも届かなかった.
彼は後悔した.彼は、いつも後悔ばかりしているのだ.
皆が、天を見上げる中、私と彼だけが、地に耳を傾けていた.私は、彼を見たし、当然彼も私を見た.
神は、意味の困窮の中から、最期の言葉を出だした.
※「・・・・・私が、愛して止まない者とは、あなたではない.あなたの知らない、あなたとは、別の者だ.私の語る愛とは、あなたの語る愛とは、まるで異なるものだ.もう、私から離れろ. 」 輪郭の滲んだ物語、冒頭のテキストへ・→
※小夜、踊ろう、小夜、