|いまだ小さき夜のために|
或いは、青のインクで書かれた断章の類、小夜へのプレゼント.
「しかし私は語るまい.小夜と彼との絆の領域だ.私が入り込む余地などまるでないのだ. 」このように語る私の目は、そうだ、あの女の目だ.優しかった小夜の母.
[ 初原、行列する集落 ] 、小夜の家、裏庭の小屋で、深夜の列車、警笛、振動、それら一連の合図、小夜の父によって、彼のすべての夜を費やして、小夜のために書き続けられた断章である.
それらの断片に何が書かれていたのか、当然、私は知っている.物語の冒頭に書かれているではないか、これから始まることは、私と彼との共同作業だと. ・→
※それらの断章は、小夜と小夜の父との絆の領域に属するものであって、私が記さなければ、その内容は誰にも分からない.断片の内容について、口を閉ざすのは、私の権利の問題だし、にしてもである.何が書かれていたかは分からないにしても、小夜のメモを紐解けば、想像ぐらいはつくだろう.そのような絆に私を巻き込んだのは、あなたたちではないか.
小夜は、この断片を自分の身体上で組み上げて、ああ、そうだ、振動の関与、幇助、そして小夜は、自分が組み立てた物語を生きたのだ.
あの狭い部屋で、小夜は、終わりのない孤独の作業を全うし続けているのだ、今現在においても.
即ち、ダンス.
私とは誰だ、彼とは誰だ、もういい、うすうす分かっていた事だ.もううんざりだ.
小夜、踊ろう、最後のダンスだ.