|賑やかなメモ、1~|
私によるタイプ、遅々として進まず、
賑やかなメモ#1.
わたしがメモをとると、紙、ペン先、かりかりと、音が、お父さんの音、標本に何か書いていた、会いたい会いた 多くの事を聞きたい、あいたい
賑やかなメモ#1.
分からないことがわたしにかたりかけ、かけられている 快楽に紛れて 何を語って切るのか 快楽が理解の邪魔をしている いまも何かが語られている 針さきで、快楽を痛みを分けようとしても、振動、ゆれが、混ぜあわせてしまう
賑やかなメモ2.
蛇も女中も同じことを言う あの時 あの時 あ ←しみのため読めず→ はいつのことを言っているのか.私にとっては今しかないというのに.夜が、私から前と後を取り除いてしまった.いずれ、今さえも失われてゆくのだ.
賑やかなメモ3.
私がこの町に来てどれぐらいの月日が経ったのだろうか.夜のせいで時間の感覚、 ←インクの滲みのため読めず→ 今はま失われたような気がする.昔読んだ蛇潜りで塗師の女が聞かせてくれた、※リルケの詩を思い出す.「時禱集」-私は神を 太古の塔をめぐり もう千年もめぐっているが まだしらない 私が鷹なのか 嵐なのか それとも大いなる歌なのかを-註15・→.だっただろうか.時間の感覚の、以下、読めず
賑やかなメモ4.
あの時、彼が言おうとしたこと、・・・・・・・・・・←破損の為判読できず→・・・・・・・・・・静かな・・・←破損の為判読できず→・・・口元に あの時、 秘密を
賑やかなメモ5.
夜のことなら、
賑やかなメモ6.
夢が、起点 彼が、
賑やかなメモ7.
おねえさんが、
賑やかなメモ8.
ホテルの女中に「この町ではレインコートを着た方が良い.体が濡れないように.それはあなたにとって良いことだから.」と一着のコートを渡されたが、断る.何か、/以下、読めず
賑やかなメモ9.
いつも同じ道を歩いているはずなのに、いつも異なった道を歩いているような気がするのは気のせいか.霧のせいで現在の位置さえ、はっきりしない./以下、読めず
賑やかなメモ10.
ホテルの女中に「あなたの身長を教えてほしい」と言われる.私は、「どうして」と聞くが、彼女は、「それはあなたのためになることだから」としか答えない.この町に来てから、/以下、破損
賑やかなメモ11.
夜.いつも夜が私の体にまとわりつく.夜は町を覆っているのか、私を覆っているのか分からなくなる時、ふと、/以下、破損
私がこの町に来てどれぐらいの月日が経ったのだろうか.夜のせいで時間の感覚さえ失われたような気がする.昔読んだリルケの詩集を思い出す.「時禱集」だっただろうか.-私は神を 太古の塔をめぐり もう千年もめぐっているが まだしらない 私が鷹なのか 嵐なのか それとも大いなる歌なのかを-.だっただろうか.時間の感覚の、/以下、読めず
賑やかなメモ12.
この町の広さ、なんて不均等な町なのだろう.認識の限界が広がりの限界とイコールではなかったのか.この町で、認識 /以下、破損
黄色い合羽を着た小さな女の子が私の前を歩いているような気がする.子供の頃、母に買ってもらった黄色い合羽、 /以下、読めず
蛇、もう気持ち悪さも感じない.魚釣り、川、水の澱み、大水、 /以下、読めず
また女中に、コートを着るように促される.が、やはり断った.これで二度目だ.今日の彼女は、賑やかな皮膚がいつもより際立って、私を見る目さえ/以下、読めず
賑やかなメモ13.
蛇は一体何を言っているのか.彼は、誰と話をしているのだろう.私と話しているのか?
蛇.「お前が知りたいことのすべては、この町の夜の中に埋もれているだろうし、お前はこの町からすべてを学ぶ必要がある.それによってこの町は作られる.」私が作るとは.
賑やかなメモ14.
蛇.「私に与えられた円弧の意味をお前は知ることができるのか.中間はない.二値を繋ぎ、/以下、読めず
賑やかなメモ15.
蛇.「油断するな、私の円弧は、あの人が私に与えた理由は、/以下、破損
賑やかなメモ16.
こうしてノートをつけているこの最中、虫の声.私の耳の辺りで聞こえる.私の耳にしか入らない音だ.音というより振動に近い.葬儀場でも鳴り響いていたような気がする.今となっては遠い昔のような気がする.それは、子供の頃より更に遡ったところにあの葬儀場は存在したのだろうか.
これで何度目だろうか、「どうしてレインコートを着ないの?あなたにはまだ夜の意味が理解できていない.それはあなたのためになるのだからいつも着ていなさい.」私のためになるとは?
賑やかなメモ17.
虫の声だろうか.この季節感のない町でさえも.子供の頃、私が住んでいた住宅、一本の長い道の両側に均質な形態を保ちながら長く続く住宅.父と一緒に、鈴虫.小さな川に-まるでどぶ川-にかかる小さな橋から.
賑やかなメモ18.
夜が揺らいだ.私は夜のことなら何でも知っている.宙を漂う夜がわずかに揺らぐ瞬間、ある何かが私をとらえる.私はそれを記述する.この繰り返しだ.この町に来てからもうどれぐらいたつのだろう.1000年か2000年か、それ以上か.気が狂いそうだ.
実はすでに気づいている.この町には多くの人がいることは.夜に覆われていようと、その気配までは隠せない.数人かもっとか.私を取り巻いて、私から離れない.この人たちの/以下判読できず
賑やかなメモ19.
もともと私にはこの
賑やかなメモ20.
いったい何を隠しているのだろう.
今であれば、父の質問に答えられる.絵画とは、融和であるし、写真とは欺きであると.
もうわたしは、何かについて語るのではなく、わたし自身について語るべきである。わたしはわたし自身に収束するのである。きわめて高い純度で.
賑やかなメモ21.
夜が語ってくれるのである.これまでの夜、いくつもの夜.
賑やかなメモ22.私は痛みを通して、他者と接する.
賑やかなメモ23.
今このようにしている私とは、傷が、
賑やかなメモ24.
儀式、あれも儀式だった.
賑やかなメモ25.
では、それはいつまで続くのだろうか.その箇所が痛みを感じるまでである.肉体は痛みを感じるためにわたしたちに備わっているのである.肉体は快楽的である.肉体は常に痛みを前提とする存在である.わたしは痛みを感じることで、他人事ではなく他者を自分として感じることができるのである.それは、このように言うことも可能である。わたしは痛みを通して他者となる.
賑やかなメモ26.
私は死んでからも裁かれると言われた.私は、私の死を考えたことがなかった.私は死ぬのだという事、
賑やかなメモ27.
境界線上に位置すること、そしてその先は演技だ.最も危険な領域へと足を踏み入れること.
賑やかなメモ28.
わたしとは、それは、“わたし”とは他者であるということである.他者としてのわたし自身.私は、私とは異なる他者を感じる.誰だろう.
賑やかなメモ29.
それらは、忌まわしい出来事ではあるが、しかしそのすべてを知った今、わたしの人生で最も大切な出来事の一つでもある.わたしが殺して父が生かした.わたしの人生唯一の父との共同作業であるのだから.
賑やかなメモ30.
わたしは傷によって救われたはずだったのに、その傷に分け入る、押し入る者たち.わたしはその傷によって苦しむのである.わたしはそれを予測できなかったのである.
賑やかなメモ31.
供物、それはわたし自身である.複数のわたし自身が供物となる.わたし自身とは他者であり、わたし自身を他者が演じる.
手篭めとは、わたし自身を他者として存在させ続ける行為である.わたしはわたしを手篭めにする.
賑やかなメモ32.
特に母はそこで行われることを知っている、他人事のように、彼女は、
賑やかなメモ33.
シャッターという生を司る音、虫ピンという痛みを司る・・・
賑やかなメモ34.
変容、それは例えばこのような言い方で私はかたろう、にじみでる、しみわたる、あふれでる.わたしは誰に伝えるのか.
祭壇とは生と死が錯綜する領域である.