夜、奇妙な会話|

 

だから、そのような質問などすべきではないのだ.あなたのために.

 

 

 

 

夜、

疑いもなく、彼が最初の五日間のうちで創造した夜である.

この夜の中で、

小夜、私の計画は過ちだろうか、無理があるのか、小夜、

「小夜、踊ろう、最後のダンスだ.」


小夜、お前に訪れたものも、そうだった、小夜、お前の期待したものがお前の期待通りに、お前の想像したものがお前の想像通りに訪れたことが一度でもあっただろうか、小夜、お前の身体に跡を残した刺し傷の数だけ、お前の知らない事が訪れたのだ.そうだったはずだ、小夜、

お前が、お前とは別の場所から訪れたものを通り、お前が自分ではない者に変容していったように、同時に、お前とは別の場所から訪れたものがお前を通って別のものになり続けたように、私も、私の外から来たものを通して、別のものとなり、そして失われよう、小夜、


次の瞬間、このタイミングを、狙いすましたように、それは必ず来るのだ.

間違いなく来るし、ほら、来た.

私に対する質問である.

 

以下、挿入、位置未定 

小夜、この会話の終了の合図は、大きな音、何か鞭で地面を叩くような音、しなり、伴い大きな振動.小夜、それらは、お前がこれまで経験したことのないような、

それらが同時に訪れる時、同時にだ、この会話の終了を意味する.

小夜、備えろ、最後のダンスだ、決して近くはない、但しそう遠くはない.

 

 

 

質問者:

これから、わたしが質問するあなたは、“わたし”ですか?それとも“僕”ですか?

あなたは、“僕”になったり、“わたし”になったり、とてもお忙しい方だから.

 

 

私:

“私”です.違うのです、私が

 

 

質問者:

少しはまともな会話が期待できそうですね.安心しましたわ.

 

 

質問者:

この計画の首謀者さん、まずあなたの計画の全体像を整理したいのです.

それは、夜の舞踏、或いは大地という、

  1. 先ず、あなたは、“物語の中で読んだ物語”の中で、読んだ“最後のダンス”を見たい.
  2. 最後のダンスを見るために舞台を計画している.
  3. 物語によると、最後のダンスとは蛇の棲み家~夢、その帰結として、空地で行われるダンスである.
  4. それは、最奥の壁の三つの覗き穴との関連.
  5. その覗き穴は、あなたが見ても何も見えなかった.その覗き穴は小夜のための覗き穴である以上、当然小夜以外の者が見ても何も見えるはずはない.
  6. そこであなたは、誰かにその穴を覗いたと想像してもらい、最後のダンスを見ようとしている.

これで間違いないでしょうか?

そして重要なことは、そのダンスとは、あなたの外からあなたに訪れるものであり、あなたは、自分以外のものを通して自分ではないものへとかあろうとしている.それは、小夜という娘がそうであったように、

 

 

 

私:

はい、間違いありません.

 

 

質問者:

首謀者さん、そもそも、物語の中で物語を読むとは、一体全体どのようなことなのでしょうか?

私が知る限り、例えば、絵画を描く場合には、最低筆の長さ分だけ、画面から離れていなくては描けないでしょうし、見る場合にも距離が必要ではないのですか?小説家の方は、小説の中で小説を書くことはできないでしょうし、まして小説の中で小説を読む事など、到底、考えられない話です.でもあなたは、物語の中で物語を読んだとおっしゃる.

 

 

 

 

 

 

私:

私にも分からないのです.本当はそうではなかったのかもしれませんが、物語の中で物語を読んだとしか言いようのないことを体験したのです.私は、書くことも語る事も、決して得意ではなく、寧ろ、 

 

 

 

質問者:

首謀者さん、この物語を作ったのが、あなたなのか、あなたの一味なのかは分かりませんが、この際、そんなことはどちらでも良いのです、自分が見たい舞台のために、物語を作った、つまり、あなたには最初から見たいものがあって、そのためにこの物語を作ったのではないのですか?それは最初は朧気だったのかもしれませんが、確かに見たいものはあった.そしてこの物語を作りながら、それを明瞭な形にしてきたのではないのですか?だったら、観客の一人のように、自分の知らないことを経験することが可能なのでしょうか?

 

 

私:

私に一味がいるなんて、そんなことは決してありません.私について書かれたコンテンツ発端・→をお読みください.私は子供の頃からいつも一人であったと書かれているではありませんか.私は、現在でも独りぼっちなのです.孤独な私ができる事と言ったら、魚釣りしかないのです.魚釣りをして寂しさを紛らわせていたわけはありません.孤独な者は魚釣りをするしかないのです.そのように書かれているではありませんか発端→ 私に一味がいたなら、もう少し私も気も楽だったでしょうに.読んでいただければ、私が物語に巻き込まれた経緯についても理解いただけると思います.私は、被害者なのですよ.気が付いたら、自分の意図に反して、物語に巻き込まれていた被害者なのです.私は物語の中で読んだ物語をできるだけ忠実にここに記しただけなのです 物語・輪郭の滲んだ物語・→ .

 

 

質問者:

首謀者さん、あなたが現在タイプを進めているというメモ 賑やかなメモ・→ だってそうです.これだって、首謀者さん、あなたが見たいものへと導くためにあなたが書いているのではないのですか?

 

 

私:

そうではないのです.私は、物語の中で物語を読みながら、気が付いた時には、物語の上を歩いていたのですが、その時ある音が聞こえたのです、聞こえたのではなく、ある音を読んだのです、その音のする方へと行ったら、

 

 

 

質問者:

確かにそうです、首謀者さん、あなたは、物語を歩いたのです.私も歩きましたわ.私はいつもあなたと一緒にいたのですから.そしてあなたは物語に書かれている、三つの覗き穴に着目した.この三つの覗き穴は小夜のための覗き穴で小夜にしか見えない穴です.私も何度も何度も覗きましたが何も見えませんでした.小夜を演じるものはこの覗いたと想像して、自分の表現を自分で考える.それであれば、あなたは何が起きるのか分からないままに観客の一人としてこれから起きる事に期待をしながら観劇することができる.あなたにとっての唯一の希望だったわけですね.それがあなたを現在苦しめているのですよ.そう、あなたは子供の頃から自分を苦しめてばかり.私はあなたの事がとても心配でした.

 

 

私:

・・・・・

 

 

 

質問者:

首謀者さん、あなたはこう言うのかもしれません身体表現の小夜に対して、ここにあるのは、枠組みなのです、その枠組みの中で、表現していただければよいのです.と.そして対話のお二人にも、コントラバスの奏者にも.その枠組みとは、あなたが見たいものを見るための枠組みなのではないのですか?

首謀者さん、さらにあなたはこんな風に言うのかもしれません.私には、演技の指導も、身体表現の振付も何もできないのです.それはできない方が良いのです.もし私にそれできたならば、私は、私の見たいことをしてしまうからなのです.それでは、観客の一人のようにして、自分の外側から私に訪れるものを経験することはできないのです.と. 

 

 

質問者:

首謀者さん、結局、あなたが見たいものは最初からあって、ご自分が見たいものを見るために計画しているだけなんですよ.そして、あなたは、自分が見たいものが見れるまで、この舞台を繰り返し行ってゆくのです.大当たりじゃありませんか?

 

 

私:

・・・・・

 

 

質問者:

この計画の中には、神について記述された物語もありますが 隠された物語 → 、旧約聖書の神について書かれたものですね.首謀者さん、あなたは、自分の外側から来たものを通して、自分を神にしようとしているのですか?

 

 

私:

そんな馬鹿な、

 

 

質問者:

そりゃそうですよね、この世界にはもう既に溢れるばかりたくさんの数の神がいて、新参者の神の居場所などもうないことは、あなたが一番分かっている事ですものね.

第一、もう誰も、救いなど求めてはいない.だってこの世にいることが一番の救いなのですからね.そして死ぬことが、救いの成就だということを皆が知ってしまっているのですからね.

 

 

 

質問者:

そもそも、“舞台をしたい”と言えばよかったのに、“舞台を見たい”と言うから、痛くもない腹を探られることになるのです. 

舞台を見たいだけではなくて、他に何か、目的があるのではないのですか?

 

 

私:

違うのです、私は、最後のダンスを見たいだけなのです.私が物語の中で読んだ物語に最後のダンスと書いてあったのです.その思いが日ごとに強くなっただけなのです.

 

 

質問者:

首謀者さん、あなたは、もう既に気づいてらっしゃるのではないのですか?私が苛立っていることを.だって、この物語には、“心”という言葉が一か所も出て来やしないんですもの.だから私が少しずつ苛立って来ているのです.心という文字が大切なのですよ.実際に心があろうとなかろうと、その心という文字を入れるという事がとても大事なのです.

 

 

私:

違うのです、私は、最後のダンスを見たいだけなのです.私が物語の中で読んだ物語に最後のダンスと書いてあったのです.その思いが日ごとに強くなっただけなのです.

 

 

質問者:

この計画の首謀者さん、私はあなたを、あなたの子供の頃から知っているのです.あんなに頭の良い子供だったのに、いいえ、今でも、私は誰よりも頭が良いと思っているのですよ、そのあなたが、こんな矛盾だらけの計画を立てるなんて、舞台を見たいのでしたら、誰かにやっていただければよいじゃありませんか.この物語を舞台にしていただければよいのです.

でも、首謀者さん、あなたは多分こう言うのでしょう、私には分かっているのですよ.二つの条件を満たす必要があるのだと.最後のダンスを見たいという欲求と、もううんざりだというあきらめと.その二つの最大公約数が、その値が必要なのだと.

でもあなたは、考えすぎなんですよ.私の大切なあなたが、こんなことで苦しんでいる姿を見ることが私はとてもつらいのです.

あなたのご両親から、あなたをお預かりしたも同然なのですよ、お二人が亡くなられたときに、天国のご両親に私は何と言って謝れば良いのか、

 

 

私:

違うのです、私は、最後のダンスを見たいだけなのです.私が物語の中で読んだ物語に最後のダンスと書いてあったのです.その思いが日ごとに強くなっただけなのです.

 

 

質問者:

首謀者さん、あなたは、こうおっしゃるおつもりではないですか?

今このように質問をして、困らせている私こそが、自分の外から訪れているものなのだ.と

 

 

私:

・・・・・

 

 

質問者:

私は、あなたの求めに応じて訪れた者なのですよ.私こそが、あなたの中にずっといた者なのですよ、それでいながら、私を邪魔になさるなんてひどいじゃありませんか.さあ、私を通して、別のものに変わっておしまいなさいよ.

私はずっとあなたのそばにいて、確かにあなたのご両親のように、あなたに食物を与えることはできなかった、いえ、与えようと思ったらできたのですが、あなたのご両親の手前、それはご遠慮しただけなのです.

そうそう、私はあなたをずっと残酷な方だと思っておりました.自分に用がなくなったものは、本当に、蛇潜りの塗師の女、あの方は、実は私はあの方をよく知っていますのよ、とても良い方で、物語では、自分から蛇潜りに降りたように書かれていますが、本当なのでしょうか?あの恐ろしい蛇潜りに自分から降りたなんて私には到底考えられないのですよ.私に何の相談もなく、あんな恐ろしいことをするなんて、私とても悲しくなりました.本当は、あなたが蛇潜りに突き落としたのじゃありませんか?邪魔になったのではないのですか?

 

そうそう、小夜のあの優しかった母のことも、私は知っていますのよ、あなたが子供の頃ちょうどあなたの家のはす向かいに住んでいた奥様でした.とてもきれいな方で、あなたの初恋の方でした.横滑り、

 

 

 

 

回答

( 質問者さん、だから、このような質問をしてはいけないのだ、即ち、ウロボロス考察・→.私に、私の尾を咥えろというのか?小夜が陥った円環・→を、ここで再現するつもりなのか?異なった半径の重なりを作り直すつもりなのか?ホテルの螺旋階段・→ ) 

質問者さん、私は、意図せず、物語の中に巻き込まれ、物語の中で物語を読んだ被害者なのですよ.

この物語は、私が書いたものではないのです.私は物語の中で物語を読んだだけなのですよ.物語には、小夜の父が書いた断片を小夜が身体上で組みたてて物語として、組み立てながらにその物語を生きた.と書いてあるじゃありませんか.物語に書いてあるのですから、そうなのです.

断片をどのようにして組み立てたのか、しかも身体上で、そんなことは私が分かるわけないじゃありませんか.小夜に聞いて下さい.

小夜のメモにしてもそうなのです.私が書いたものではなく、ホテルの小夜の部屋でたまたま発見したメモ 賑やかなメモ・→  を、私は、可能な限り忠実にタイプしているだけなのです.

私が、私の見たいもののために・・・、だから考察をしているのです.考察→ 考察をしながら、分かってきたこともあるのですが、それが正解なのかどうかも分からないのです.だから物語については、私に聞くのではなく、小夜の父か小夜に聞いていただきたいのです.ホテルの女中に聞いても駄目でしょう.ホテルの女中を作り上げた張本人こそ、小夜なのですから.同じ意味で、私だって、小夜が物語を組み立てる時に、そう、もしかしたら副産物のように出来上がってしまったものかもしれないのです.否、そうではない、小夜の父、張本人は、小夜の父なのです.彼に聞いてください.但し、彼は死んだと書いてあります.若しかしたら、横滑り参照:隠された物語・→ のせいなのかもしれません.彼女はとても美しく、髪は、私は彼女の虜になってしまったのです.すべては、横滑りのせいなのかもしれません.

とにかく、私は被害者なのです.被害者をそこまでいたぶらなくてもよいのではないですか.

私は最後のダンスを見たいだけなのです.


声:

質問する者、あなた、

あなたの述べたことは、多少極端ではあったが、大体においては、

※声の主についての説明は?


 

 

 

私は、終始一貫して、徹頭徹尾、被害者を装い、( 忘れてはならない、私は、意図せず物語に巻き込まれた被害者なのだ !  時々、忘れてしまうことがあるが !  ) 揺らぐことなく、話を進めるのだ.

 

先ず、コントラバス.計画に振動を持ち込もう、その先にあるものを、次に、対話の二人.計画に声を、紛れ込み、融和と反目を紛れ込まそう.そして、身体表現の小夜を迎えよう.この順序は揺るがない.即ち、ウロボロス.

 

そして神妙な面持ちで、このように切り出そう、「協力していただきたいことがあるのです. 」と.いや、こうだ、「少しだけ、力を貸していただけないでしょうか. 」少し違う、こうだ、「相談にのっていただけないでしょうか.実は、おかしな話に巻き込まれてしまって. 」だ.相手は、怪訝な表情で私を見るのだろうが、そうに決まっている.しかし、怯むことなく前進だ、これで通すしかないのだ.

先ず鏡を見て、無精髭を剃ろう.私の顔はどうなっているのだろう? 小夜、お前が自分の顔を見たのはお前の生においては、三度だけだった.蛇潜りに向かう車窓・→、蛇潜りから初原に向かう車窓、そして、輪郭の滲んだ町の水たまり

 

 

 

 


もう語ることはよそう、私の快楽のために.

( 皮肉なものではないか、私を被害者たらしめているこの物語から、ヒントを得るとは !  )